- 暗黙のルールがわからない
- 報連相のタイミングがつかめない
- 人間関係でつまずいてしまう
こうした理由で前職を離れ、就労移行支援を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、「2年間で本当に就職できるのか」「期間内に就職できなかったらどうなるか」と不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、就労移行支援の利用期間の基本情報から2年間の有効な使い方、延長の条件について解説します。
最後まで読むことで、限られた期間を有効活用し、自分に合った働き方を見つけるきっかけになるはずです。
就労移行支援の利用期間は何年?
就労移行支援は、原則として利用できる期限が設定されています。
「どのくらい利用できるのか?」あるいは、「利用者の平均利用期間はどれくらいなのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
ここでは、就労移行支援を利用できる年数や平均的な利用期間について解説します。
利用期間は原則として2年
就労移行支援の利用期間は、厚生労働省の定める基準に則り原則として2年間です。
2年間に設定されている理由は、以下の通りです。
- 仕事に必要なスキルの習得や経験を積み、できるだけ早く就職できるようにすることを目的としている
- 期間が長すぎると事業所への依存が生まれ、自立に向けた意識が薄れるリスクがある
就労移行支援は、あくまで就労に必要なスキルの習得や自分に合った仕事探しをゴールとしています。
そのため、必ずしも2年間通う義務はなく、就職先が決まればその時点で利用を終了できます。
参照:就労移行支援事業
平均的な利用期間は?
厚生労働省のデータを見ると、就労移行支援を通じて就職した方の平均利用期間は15.9か月です。
制度上は最長2年間通所できますが、仕事が見つかればその時点で利用を終了できるため、実際の利用期間には個人差があります。
実際の就職者の利用期間(平成29年度)を見ると、以下の通りです。
| 就職者の利用期間(平成29年度) | |
|---|---|
| 利用期間 | 就職者の割合 |
| 2年以下 | 93.5% |
| 2年超3年未満 | 5.9% |
| 3年超 | 0.5% |
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000684026.pdf
表から、就職者の93.5%が2年以下の利用期間で就職していることがわかります。
なかには最短数か月で就職する方もいますが、重要なのは期間の短さではなく自分の課題を解決することです。
就労移行支援は早く就職することだけが目的ではありません。
利用期間の長さにとらわれず、自分の特性や課題と向き合いながら無理のないペースで準備を進めることが大切です。
2年で就職できなかったらどうなる?
就労移行支援の利用期間は、原則として2年間と決まっています。
「もしこの期間内に就職ができなかったら」と不安に感じる方も少なくありません。
しかし、条件次第では利用期間の延長が認められるケースがあり、期間終了後も複数の選択肢があります。
延長が認められるケースがある
利用期間は原則として2年間ですが、自治体の判断により延長が認められる場合があります。標準利用期間を超えても支援の継続が必要で、引き続きサービスを提供することによる改善効果が具体的に見込まれる場合に、市町村審査会の個別審査を経て延長が認められることがあります。
採用内定や職場実習などの具体的な就職予定は判断材料の一例ですが、延長の可否は個々の状況を踏まえて自治体が判断します。
- 企業から採用内定をもらっている
- 具体的な職場実習が入っている、または実習中である
ただし、自治体によって判断基準が異なるため、市区町村の障害福祉課や相談支援員に早めに相談することが大切です。
申請時期や審査に要する期間は自治体によって異なるため、期限に余裕をもって市区町村の障害福祉窓口へ確認しましょう。
期間終了後の3つの選択肢
就労移行支援の利用期間が終了しても、延長申請以外に次の3つの選択肢があります。
①複数回利用(再利用)
就労移行支援の複数回利用を希望する場合は、過去の利用状況や現在の支援の必要性などを踏まえ、自治体が個別に支給決定します。
再利用の取扱いは自治体によって異なるため、次の状況も含めて市区町村へ相談します。
- サービスを終了後に企業で就労経験を積んでいる
- 前回の利用から相当期間が経過し、当時から状況が大きく変わっている
ただし、複数回利用が認められるかは自治体が個別に判断するため、希望する場合は市区町村の障害福祉窓口へ相談しましょう。
②就労継続支援A型・B型へ移行する
就労移行支援のほかに、就労継続支援A型・B型へ移行する方法もあります。
就労継続支援とは、障害や病気のために一般就労が困難な方を対象に、働く機会や訓練の場を提供する障害福祉サービスです。
A型・B型の違いは以下の通りです。
- A型:事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を受け取りながら働ける
- B型:事業所と雇用契約を結ばず、自分の体調やペースに合わせて働ける
就労移行支援の利用期間が終了しても、こうしたサービスを活用しながら就労経験を積み、将来的に一般就労を目指せます。
③自力で就職活動を継続する
ハローワークや障害者向け転職エージェントを活用しながら、自力で就職活動を続ける方法もあります。
利用期間が終了しても、支援の選択肢が完全になくなるわけではありません。
1人で悩みを抱えこまずに、支援員や自治体の窓口に相談することで、自分に合った方法が見つかるでしょう。
就労移行支援の2年間でやること
就労移行支援の2年間を最大限に活用するには、やることを前半・後半に分けて計画的に取り組むことが重要です。
利用期間は単に就職を目指す時間ではなく、自分の特性を理解し、働くための準備を整える期間です。
2年間を計画的に活用することで、再離職のリスクを防げます。
ここでは、就労移行支援でやることを前半・後半に分けて見ていきましょう。
前半【利用開始~12か月まで】(就職に向けた土台作りを進める)
利用開始から1年目は、生活リズムの安定や体調管理など、働くための基礎作りの時期です。
就職を急ぐのではなく、まずは安定して通所できる状態を目指します。
この時期に取り組む主な内容は以下の通りです。
- 生活リズムを整える:毎日通所できる体制を作る
- 前職のつまずきの原因を整理する:暗黙のルール・報連相のタイミング・人間関係でのつまづきが、発達障害の特性に起因する可能性があることを支援員と一緒に整理する
- コミュニケーション訓練を受ける:職場での対処法を体系的に学ぶ
こうした訓練を受けることで生活習慣を整え、過去に仕事が続かなかった原因が見えてくる場合があります。
この時期はスキルを身につけるだけでなく、過去に仕事が続かなかった理由を振り返る重要な時期です。
自己理解を深めることが、自分に合った働き方を見つけ、再離職の防止につながります。
後半【13~24か月まで】(就職に向けた実践的な準備を進める)
後半は、前半で整理した自己理解をもとに、実際の就職活動へ移行する時期です。
主な取り組みは以下の通りです。
- 企業実習へ参加する:実際の職場環境を体験しながら、自分に合った仕事内容や働き方を確認する
- 履歴書や職務経歴書を作成する:支援員からアドバイスを受けながら就職活動を進める
- 面接対策を行う:支援員が面接官役となり、本番を想定した模擬面接を実施する
こうした訓練は、働くうえで自分に必要な配慮事項を整理し、職場へ適切に伝える練習にもなります。
就職はゴールではなく、あくまで入社後も長く働き続けるための準備です。
またこの時期は就職先を決めるだけでなく、自分に合った職場環境や働き方を見極める期間でもあります。
前半で深めた自己理解や実習経験を活かして就職活動に取り組めば、「また辞めてしまうかも」という不安が軽減されるでしょう。
2年間を無駄にしないための事業所選びのポイント
2年間という限られた期間を最大限に活かすには、最初の事業所選びが最も重要です。
どの事業所を選ぶかによって、受けられる支援内容や就職後の定着率は大きく変わります。
特に、過去に人間関係やコミュニケーションでつまずいた経験がある方は、自分の特性に合った事業所を選ぶことが重要です。
ここでは、就労移行支援の2年間を無駄にしないための事業所選びのポイントを解説します。
特化型を選ぶ
発達障害の特性によって仕事が続かなかった経験がある場合、発達障害に特化した事業所を選ぶことをおすすめします。
総合型の事業所でも就職自体は可能です。
しかし発達障害の特性に起因する悩みを根本的に改善するには、特性理解に基づいた専門的な支援が欠かせません。
特化型の事業所では、自分の特性や苦手な場面を整理し、職場で必要な配慮を自ら伝えられる状態を目指せます。
こうした自己理解を深めることが、「次こそ長く働ける」という確信につながります。
見学・体験利用で支援員との距離感を確かめる
事業所選びでは就職実績も大切ですが、長く通い続けるには支援員との相性も重要なポイントです。
相談しづらい環境では悩みを打ち明けられず、十分な支援を受けられない可能性があります。
見学・体験時には、以下の点を確認しましょう。
- 自分の悩みを親身に聞いてくれるか
- 発達障害の特性への理解が十分にあるか
- 事業所の雰囲気がアットホームで安心できるか
少しでも「合わないな」と感じたら、その直感を大切にしてください。
事業所は他にもたくさんあります。
少しでも違和感を覚えたら無理をせず、複数の事業所を見学・体験したうえで比較検討しましょう。
就職実績と定着率を確認する
事業所を選ぶ際は、就職実績だけでなく、就職後も長く働き続けられているかを示す定着率の確認も不可欠です。
定着率の高い事業所を選ぶことで、再離職のリスクを軽減できるからです。
特に、「また職場でうまくいかなかったらどうしよう」と不安を抱えている方にとって、定着率は重要な判断材料になります。
定着率90%前後を1つの目安として、就職実績とあわせて事業所を比較してみましょう。
就労移行支援の期間に関するよくある質問
就労移行支援に関するよくある疑問をQ&A形式でまとめました。
就労移行支援の期間はどうして2年なのですか?
利用期間が2年に設定されているのは、一般就労に必要な知識やスキル、職場実習などを計画的に進めるために十分な準備が必要だからです。
期間を必要以上に長く設定すれば、利用者が事業所に依存してしまい就職に対する意識が薄れてしまうリスクがあります。
利用者によって課題や目標は異なるため、期間の長さよりもどのように活用するかが重要です。
就労移行支援を3年以上利用できますか?
就労移行支援の利用期間は原則2年間です。
ただし、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合は、原則1回、最大1年間延長できることがあります。
延長の可否については自治体によって判断基準が異なるため、事業所や市区町村の障害福祉課へ確認しましょう。
途中で利用をやめることはできますか?
はい、利用開始後であっても途中で終了できます。
例えば、「思っていたところと違う」「ここは合わないなあ」と感じたらいつでも退所は可能です。
また、利用期間の合計が2年を超えていなければ、残りの期間を別の事業所で利用できる場合があります。
就労移行支援の期間を有効活用して就職を目指そう
この記事では、就労移行支援の利用期間について以下の内容を解説しました。
- 利用期間は原則2年間で、平成29年度の就職者の平均利用期間は15.9か月、93.5%が2年以下で就職している
- 2年で就職できなかった場合も、延長申請、複数回利用について自治体へ相談する、就労継続支援へ移行するなどの選択肢がある
- 利用期間を前半(土台作り)と後半(実践的な就職準備)に分けて計画的に活用することが重要
- 2年間を最大限に活かすには、発達障害特化型の事業所を選ぶことが大切
就労移行支援の2年間は、就職を急ぐための時間ではありません。
自分の特性を理解し、同じ失敗を繰り返さない働き方を身につける準備期間です。
だからこそ、発達障害の特性理解に特化した事業所を選ぶことが、長く働き続けるための最善の選択肢となるでしょう。