「職場の暗黙のルールが分からず、気づけば周囲から浮いてしまう」「報連相のタイミングが掴めず、結果的にミスに繋がってしまう」といった経験はありませんか?
仕事が続かないことで焦りや不安を感じる方は多くいますが、つまずきの原因が努力不足とは限りません。報連相が苦手だったり、周囲との距離感が掴めなかったりするのは、発達特性に起因している可能性があります。
就労移行支援は、そうした発達特性や障がいのある方が、自分の働き方を作り直すための場所です。しかし、闇雲に事業所を選べばよいわけではありません。本記事では、就労移行支援で実際に何をするのか、利用条件から後悔しない事業所の選び方までを具体的に解説します。
就労移行支援とは?
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく公的な福祉サービスで、一般企業への就職を希望する障がいや難病のある方が働くための準備をする場所です。ハローワークのような求人紹介とは異なり、個人の特性に合わせた訓練や実習を通じて、ご自身に合った働き方や対処法を見つけることを目的としています。
似た名称のサービスに「就労継続支援A型・B型」がありますが、大きな違いは「企業への就職(一般就労)を目指すか」にあります。主な違いは、以下の通りです。
| サービス名 | 主な対象 | 雇用契約 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般就労を目指す方 | なし | 就職に向けたスキルの習得 |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結んで働きたい方 | あり | 支援付きの就労機会の提供 |
| 就労継続支援B型 | すぐに就労が難しい方 | なし | 軽作業を通じた就労訓練 |
就労移行支援は、最大2年間の利用期間の中で、一般企業へ就職するためのステップを段階的に進めていくのが特徴です。利用料金は前年の世帯所得に応じて異なり、多くの方が無料で利用できます。
出典元:厚生労働省
就労移行支援で何をするのか?具体的な4つの支援内容
就労移行支援で受けられる支援は、大きく以下の4つの段階に分けられます。
- 働く土台とスキルを身につける
- 職場実習や見学で自分に合う環境を確かめる
- 就職活動を二人三脚でサポートする
- 就職後も6か月間は職場定着を支える
それぞれの内容を見ていきましょう。
①働く土台とスキルを身につける
就労移行支援では、通所を通じてPCスキルやコミュニケーションスキル、ビジネスマナーなど、職場で求められる基礎力を段階的に身につけます。プログラムの専門性や対応する障がいの分野は、事業所によって以下のような違いがあります。
| 事業所のタイプ | 主な対象 | 特徴と訓練内容 |
|---|---|---|
| 総合型 | 障害全般(身体・知的・精神など) | 基本的な生活習慣の確立、マナーや軽作業など幅広い訓練。就労継続支援と連携している事業所もある |
| 障害特化型 | 発達障害特化 | 報連相のタイミング、優先順位の付け方、特性別の対策など |
| 精神障害特化 | 体調管理、ストレスコントロール、メンタル安定のプログラムなど | |
| 職業特化型 | IT・クリエイティブ | プログラミング、Webデザイン、動画編集など即戦力となる技術の習得、資格取得のサポート |
| 事務職特化 | Excel、文書作成、総務・経理実務など即戦力となる技術の習得、資格取得のサポート |
自身の抱える困りごとに合わせ、適切な専門性を持つ事業所を見極めることで、長く働き続けられるマインドやスキルを身につけやすくなります。
②職場実習や見学で自分に合う環境を確かめる
就労移行支援では、就職前に企業実習や職場見学を通じて、実際の環境と相性を直接確認できます。一般的な就職活動では、「実際に働いてみたら思っていた雰囲気と違った」「自身の適性に合わない部署に配属されてしまった」といったミスマッチが起こりやすく、これが早期離職の原因になることも少なくありません。
職場実習や見学は、実際に職場で自分の特性がどう現れるかを事前に試せるため、ミスマッチによる早期離職を防ぐ有効な手段です。就労移行支援を通して、自身の適性に合った職場を見つけることで、長く働き続ける土台を作り、自信にもつながるでしょう。
③就職活動を二人三脚でサポートする
就労移行支援の事業所では、履歴書の作成や面接対策、求人の選定までを支援員と一緒に進めます。たとえば、発達障害に特化した事業所なら、障がい者雇用の面接で頻出する質問(通所のきっかけや体調を崩した時期など)を繰り返し練習します。話があちらこちらに飛びがちな発達特性に対しては、結論から伝える「PREP法」を意識した受け答えの訓練をする事業所もあるのが特徴です。
「一人で就職活動をしてもまた同じ失敗をしそう」と不安を抱える方でも、支援員が伴走するため、一人で悩みを抱え込むことがありません。
④就職後も6か月間は職場定着を支える
就労移行支援の事業所には、就職後6か月間の定着支援が義務付けられています。そのため、企業との間に入って職場環境の調整をしたり、定期的な面談で業務上の悩みを相談したりできます。
会社で働き続けると、「上司の指示が曖昧で何をすればいいか分からない」「オフィスの音がうるさくて集中できない」といった、求人票などの文字情報だけでは予測できなかった困りごとが出てくるものです。そうしたときに、支援員が間に入り会社側に伝えて調整してくれます。就労移行支援事業所は、単に仕事を紹介してもらう場所ではなく、「新しい職場に馴染めるか」「またすぐ辞めてしまうのではないか」という不安をなくし、長く働き続ける仕組みを整える場所です。
出典元:厚生労働省
就労移行支援を受けられる人の条件
就労移行支援は、一般就労を希望する、原則65歳未満の障がいや難病のある方が対象となります。利用の際は、市区町村が発行する「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
対象となる条件は、以下を参考にしてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 一般就労を希望する、18歳以上65歳未満の方 |
| 対象となる状態 | 精神障害、発達障害、知的障害、身体障害、難病などがある方 |
| 必要となる書類 | 自治体が発行する「障がい福祉サービス受給者証」 |
以下のようなケースでも受給者証が発行されれば利用できます。
- 障害者手帳がない場合
- ひきこもり状態にある場合
- 適応障害などの場合
就労移行支援を利用できるか迷う場合は、まずは通所を検討している事業所や自治体の窓口に相談してみてください。
出典元:厚生労働省
事業所選びで後悔しないための3つのポイント
日本全国に数多く存在する就労移行支援事業所の中から、自分に最適な環境を選ぶための基準を解説します。 事業所選びで確認すべきポイントは、次の通りです。
- 自分の障がい・特性に特化したプログラムがあるか確認する
- 就職実績と定着率を確認する
- 見学や体験で雰囲気を確かめる
以下で解説します。
ポイント1.自分の障がい・特性に特化したプログラムがあるか確認する
就労移行支援事業所によって、プログラムの専門性や得意とするサポート領域には大きな差があります。あらゆる障がいを広く対象とする総合型の事業所よりも、自分の抱える困りごとに対して深い理解を持つ「特化型」の事業所を選ぶべきです。
- 特性に合わせた専門的な対処法が学べる
- 同じ悩みを持つ仲間と出会い、自己理解が深まる
- 企業へ伝えるべき「必要な配慮」を具体的に言語化できる
自分の苦手な特性をただ隠して頑張るのではなく、「自分にはこうした特性があるため、指示はテキストでもらえると正確に動けます」のように、企業側に対して具体的な配慮を伝えられる状態を作れるのが利点です。同じつまずきを繰り返さずに長く働き続けるには、特化型の事業所を検討してみましょう。
ポイント2.就職実績と定着率を確認する
「過去に就職できても長続きしなかった」という経験がある方は、事業所の「就職率」だけでなく、就職後にどれだけ長く働き続けられているかを示す「定着率(就職後6か月継続就労率)」を確認してください。
就労移行支援の全国平均実績と専門的な事業所のデータは、以下の通りです。
- 障がい者の就職1年後の職場定着率:精神障害49.3%、発達障害71.5%
- 障がい者全体の就職1年後の職場定着率:58.4%(2017年公表の調査)
(出典:障害者職業総合センター)
一般社員の定着率が平均約88~89%であることに対し、発達や精神の特性のある方の定着率は低いことがわかります。しかし、ディーキャリアのような発達障害に特化した事業所から就職した場合、職場定着率は93.4%(6か月後)と、高い数字を維持しています。
このように過去の平均データと比較しながら、信頼できる実績を持つ場所を選びましょう。
ポイント3.見学や体験で雰囲気を確かめる
就労移行支援の事業所を選ぶ際は、Webサイトに記載されている情報だけで決めるのではなく、通所前に実際の空気感を確かめるのがおすすめです。見学や体験利用の際に確認すべきチェックリストは、以下の通りです。
- スタッフが自分の悩みに丁寧に耳を傾けてくれるか
- 他の利用者の様子や事業所の雰囲気に馴染めそうか
- プログラムの内容が自分の課題解決に直結しているか
- 自分のペースに合わせた通所を認めてくれるかどうか
実際に足を運び、無理なく通い続けられる環境かどうかを確かめると、通所後の後悔や失敗を防げます。自分の特性にマッチした安心できる環境をスムーズに見つけたい方は、まずは当サイトの「無料診断」を活用して、最適な環境を絞り込んでみてください。
就労移行支援に関するよくある質問4選
ここでは、就労移行支援の利用を検討する際に、よくある質問にお答えします。事業所に直接聞きにくいことなども回答しているため、ぜひ参考にしてください。
Q1.就労移行支援は意味ない・ひどいと聞きましたが本当ですか?
ネット上のネガティブな評判は、主に「利用目的と事業所のミスマッチ」が原因で生じているケースがほとんどです。
たとえば、自分の目的が明確でないまま通所を始めたり、発達障害の特性があるのに総合型のプログラムしか提供していない事業所を選んでしまったりすると、「意味がない」と感じてしまうことがあります。
事業所の専門性や対応力を正しく見極めて適切な場所を選べば、働きづらさを克服するための効果を感じられるでしょう。
Q2.就労移行支援を利用するまでの具体的な手続きは?
利用開始までの基本的なステップは、以下の通りです。
- 気になる事業所へ問い合わせ、相談と見学をする
- 市区町村の窓口で「受給者証」を申請する
- 受給者証が交付されたら、事業所と利用契約を結ぶ
- 個別の支援計画に基づき、訓練をスタートする
受給者証の発行は無料ですが、通院記録や医師の診断書が必要です。また、1〜2か月程度の期間が必要な場合があるため、余裕を持って手続きを始めるとスムーズに利用できます。
申請の手順や必要な書類がわからない場合は、通所を希望する事業所のスタッフが丁寧にサポートしてくれるため、まずは利用したい事業所に問い合わせるところから始めてみてください。
Q3.就労移行支援に行ってよかったことは?
発達特性や人間関係で悩んできた多くの利用者が、以下のようなメリットを実感しています。
- 自分の特性や「得意・苦手」を客観的に言語化できるようになり、自己肯定感が回復した
- 安定して通所を続けることで、自分に合った生活リズムや働き方のペースが掴めた
- 復職後も一人で抱えこまず、すぐに相談して解決できる場所がある安心感がある
これらは個人の努力だけでは得にくい、就労移行支援ならではの効果です。
Q4.就労移行支援に通うのは「恥ずかしい」ことでしょうか?
「いい大人が福祉サービスで訓練を受けるなんて恥ずかしい」「周りの目が気になる」と悩む方は少なくありません。しかし、就労移行支援は決して恥ずかしい場所ではなく、「長く働き続けるための戦略を練り直す、前向きなステップ」です。
実際に通所してみると、前職で人間関係につまずいた方や、発達特性による働きづらさを抱えた「同じ境遇の大人たち」が、真剣に自分と向き合っています。一人で悩み続けて同じ失敗を繰り返すよりも、専門家の支援を受けて働きやすい環境を手に入れる方が、ずっと建設的で有意義な選択と言えるでしょう。
発達障害への支援の深さは事業所によって異なる
就労移行支援は、仕事を探す場所ではなく、自身の苦手分野を理解しながら就職活動の訓練を受けられる場所です。「報連相のタイミングがわからない」「職場の人間関係の距離感がつかめない」といった悩みは、決して努力不足が原因ではありません。長期的に安定した就労を目指すのであれば、自身の発達特性を正しく理解し、職場でどのような配慮が必要かを会社側へ説明できるようになることが重要です。
そのためには、ご自身のお悩みに精通した特化型の事業所を選ぶことが、就職後のミスマッチを防ぐ有効な選択肢となります。人間関係の悩みを根本から解決し、自分に合った最適な事業所を見つけたい方は、まずは当サイトの無料診断、比較表を活用して、環境を絞り込んでみてください。